真昼の光の中で チュニジア1
2019-07-21


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 真昼の強い日差しが石造りの白い外壁に反射して眩しい。半袖の服からでた腕や、靴から出た足の甲がチリチリと焼けるようだ。メディナ(旧市街)の通りは狭く迷路のように複雑に入り組んでいて、ただ目くらめっぽう歩いていると、いつのまにか袋小路に行き当たって、またもと来た道を引き返すようになってしまう。せり出した家の陰になった所に入ると、冷蔵庫の中に入ったように乾燥した空気が肌にひんやりして心地よい。馬蹄形に縁取られた中の明るいブルーに塗られた木製の入口の扉は、いくつもの鋲が打ち込まれ芸術的な幾何学模様を生み出している。大空のぬけるような青、地中海の澄んだ青、眩しいくらいの白い家々、装飾された扉の青、その強烈なコントラストが真昼の夢幻の世界へと導いてくれる。

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 内陸に行くにしたがって空気が乾燥し、白と青の世界からベージュ色一色の世界になっていく。赤茶けた大地に、規則正しく植えられた地平線の彼方までつづくオリーブ畑。まるで軍隊の行進のように縦・横・斜め、どこから見てもきれいに整列している。車でいくら走っても、走っても、家も人も見あたらず、同じ景色が延々とつづく。

 やがて町が近づいてくると、パラパラと石造りの四角い家が見えてきて、それがだんだんと増えてきて通りの両側に家並みがつづく。カフェには、強い日差しをさけて男たちが水パイプ片手に何をするでもなく通りの方に顔を向けて、時を過ごしている。女性の姿は全く見あたらない。薄汚れた黒い犬が体を丸めてカフェの石の床に横になっている。昔ながらの食料品兼雑貨屋。文字は異なっていても、どこに行っても見かけるファンタと赤地に白のコカコーラの看板。自動車の修理工場なのだろうか。廃屋のようなガランとしたガレージに油で黒く汚れたモーターや計器、自動車のタイヤなどが、そのまま床に雑然と置かれている。ロバに引かせた荷車の横を歩く日に焼けた老人。ほどなく、続いていた家並みは途切れてしまう。そして、再び見晴らしのよい乾燥した大地の一本道をひた走る。 (つづく)

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[旅]

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